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2016.09.26

ビッグデータ活用

地域経済分析システムRESAS(Regional Economy Society Analyzing System)解説

 「地域経済分析システム」は、英語表記(Regional Economy (and) Society Analyzing System)の頭文字を取って、“RESAS”(リーサス)と名づけられ、RESAS は、4つのマップ、具体的には「産業マップ」「観光マップ」「人口マップ」「自治体比較マップ」で構成されている。
 今回の地域経済データでは、官制ビッグデータ活用の手本とも言える“RESAS”について、滋賀県、彦根市へどのように応用していくことができるのか考察していく。

地域の産業構造について知る「産業マップ」

 図1は、滋賀県彦根市の産業構造の全体像を表している。業種毎のグラフ棒の長さがその産業が生み出す付加価値額の大きさを表している。また、どの産業が域外から稼いでくる産業か、どの産業が付加価値を多く生み出す産業か、どの産業が雇用を多く生み出す産業か、といったことも把握することができる。このように、様々な観点から、どの産業を強化すべきか、都道府県・市区町村が産業戦略を立てる際に役立てることができる。

域内企業の財務状況動向が「見える化」でわかる

 図2は、滋賀県における中小・小規模企業財務比較のレーダーチャートである。都道府県単位・産業中分類単位で営業利益率や労働生産性等21の財務指標について、5段階のレーダーチャートで表示することにより、産業単位で財務指標の地域間比較や産業間比較ができる。10年間の財務指標の推移をグラフで表示する機能もあり、地域の産業の営業利益率や労働生産性等の推移が把握できる。これらの機能により、昨今の域内企業が弱いポイントを知ることができ、経済政策の重点項目を設定する際の指標とすることも可能である。

  • データは2005年から2014年までの年間約100万社の中小・小規模企業(約60%が小規模事業者)の財務情報に基づき算出。
  • 21の財務指標のうち、営業利益率、労働生産性、売上増加率、運転資金月商倍率(営業運転資本回転期間)、自己資本比率、実質債務償還年数(EBITDA有利子負債倍率)の6指標は、経済産業省が提案する「ローカルベンチマーク(地域企業の経営診断としての指標)」にもなっている。

特許分布をマッピングすることで技術集積情報を把握することが可能

 図3は、滋賀県彦根市における機械工学分野の特許分布図である。現存する約150万件(国内企業等が保有する特許数)の特許を技術分野別にマップ上に表示することで、地域の技術の集積状況を把握、また、都道府県・市区町村単位で、全国と特許割合を比較することで、地域で支援すべき産業の特定につなげることができる。個別企業の有している特許を一覧で表示することもできるため、産学官連携の検討等に役立てることができる。特許の共同出願者も分かるため、ある大学と共同出願している企業を特定でき、さらなる産学官連携を促進できる。

  • 2014年9月時点の特許情報。個人特許権者については、秘匿処理をしているため、技術分野のみを表示。

まとめ  的確な戦略策定には現状分析が必須

 今回はRESASの【産業マップ】について紹介したが、【産業マップ】以外に【地域経済循環マップ】【農林水産業マップ】【観光マップ】【人口マップ】【消費マップ】【自治体比較マップ】の6種類の分析マップが公表されている。【産業マップ】の中でも、今回紹介した3種の分析以外に事業所立地動向、輸出入花火図、海外への企業進出動向なども収録されており、まだまだ可能性はありそうだ。