空き家化している歴史的建造物の背景にはおおよそ、次のようなものがある。
- 歴史的な建造物は、その街(自治体)のシンボルである為、「簡単には放棄できない」又は「壊せない」。
- 古くから、その地域の名家(庄屋・名士)であるケースが多く、解体したり、売却する事が難しい。
- 個人で維持できなくなった歴史的な建造物は、自治体や国に寄付され、登録文化財等として登録され、最低限の維持が成される。 しかし、行政主導で再生する場合、従来型の記念館や資料館、地域センターとなり指定管理料(委託料)などが更に発生する事になり、ほとんどが赤字運営となるケースが多い。
- 寄付された建物は、活用されていない状態(空き家)でも、最低限の維持管理コストが年間数百万必要となるケースもある。
- 自治体が保有又は預かっている建物なので、民間企業が活用できない。
- 採算の合う事業モデルに出来なくて困っている地方自治体は多い。
NOTEは、こうした物件を「10年間無償で借り上げ(固定資産税相当額を負担)、資金を投下して改修し、これを事業者にサブリース(又貸し)し、10年間の家賃収入で資金回収する」という手法を採用している(デベロッパー的な要素)。所有者にとって、固定資産税の負担がなくなり、修繕等のメンテナンスの心配が不要となるばかりでなく、10年後には再生された物件が戻ってくる、というメリットがある。
NOTEは、古民家を10年先の未来に継承し、その空き家が10年間活用されることによる地域内・地域間の交流の成果が地域を再生し、若者の転入、耕作放棄地の活用、里山の再生、6次産業化、内発型産業の創出、祭の再生などに繋げていこうとしている。
NOTEの古民家再生は、空き家となった古民家をその土地に根ざした食文化や生活文化とともに再生することにある。
古民家の再生と投資ファフンド
日本の歴史都市に存在する古民家を、新しい観光資源として利活用する場合、従来、行政が物件の所有とリノベーションを行い、施設運営を民間が担当する指定管理者制度で行われてきた。この制度は運営維持(費用)の一部、または全部が行政負担となり財政を圧迫し、事業廃止に至るケースも少なくない。指定管理料を0円とすることで運営維持にかかる費用を軽減することができる。この形態は、スペインの「パラドール(Parador)」やポルトガルの「ポザーダ(Pousada)」に類似している。
パラドールは、古城などを改装し、或いは景勝地に新しく建てた半官半民の宿泊施設網で、約100ほどのホテルからなっている。ポザーダは、古城や修道院などを改装した国設民営のホテルグループで、ポルトガル全土に45軒ほどある。パラドールと同じく、世界中で多くの人気を得ている理由はホンモノの歴史施設で、景観・文化を味わえる点である。
篠山城下町ホテルNIPPONIAは、宿泊10室のホテル事業で、資金のほぼ全額を民間資金(投資ファンド)で実施している。この「投資ファンド方式」により、地方自治体との調整や予算化の必要もなく、税金を使わずに空き家となっている古民家を買い取り、事業運営することが可能になったのである。
「投資ファンド方式」が決定された背景には、一般社団法人NOTEは、これまで地域との信頼を培いながら、歴史的建築物や古民家を、宿泊施設や店舗等として再生・活用してきた実績(ノウハウ)を有する事業者であり、投資リターンがコミットできる確りとした事業計画があったからに他ならない(城下町全体をひとつのホテルに見立てた構想など)。勿論、事業者誘致、デザイン、情報戦略、マネジメントにも優れた事業者であることは言うまでもない。
地方創生やインバウンドの推進を追い風とし、地域の課題を解決するビジネスのヒントが、篠山城下町ホテルNIPPONIAの取り組みのなかに数多く読み取れたのではないだろうか。ひとつ明確なことは、中間支援活動を担う組織が必要だということである。
参考
一般社団法人ノオト http://plus-note.jp
『日本の地方をステキに変える ~地方に光をあてる 空き家アセットマネジメント~』(一般社団法人ノオト)
『47行政ジャーナル』(2013年4月)