平成28年度に一般社団法人近江ツーリズムボードにより実施された「彦根市観光客満足度調査」の速報を公開。 彦根市内観光エリア4箇所に調査ポイントを設定し、彦根市を訪れた日本人観光客にランダムでアンケート調査を実施した結果、977枚サンプルを得ることができました。本調査は平成21年度に観光庁により全国50地域を対象に実施された「観光地の魅力向上に向けた評価手法調査事業報告書」で実施されたアンケート票を使用し、アウトプットを揃えることで彦根市以外の50都市とレベル感を比較することが可能となっています。観光入込客数や宿泊客数、外国人観光客数など彦根市が見習うべき観光先進都市と比較することで彦根市の課題を推察することができる他、逆に客観的な彦根市の打ち出すべき魅力を知ることもできます。観光庁の調査では最も多い地域のサンプル数で631であることから、今回の彦根市調査では更に精度の高いサンプル数が集まったと考えられます。今回はこの調査結果を元に各項目について考察し、彦根市観光の方向性について検証します。
彦根市観光は東海圏・近畿圏の観光客が中心
今回の調査では年齢別でみると40代、50代、60代がトップ3を占めており、中年から年配の方を中心に来訪されていることがわかる。また居住地別でみると愛知県、岐阜県の東海圏合計が26.9%、大阪府、京都府、兵庫県の滋賀県以外の近畿圏合計が24.1%で多くを占めており、首都圏は9.8%であった。男女比はほぼ同等であった。夫婦旅行が全体の26.2%と最も多く、次いで子連れ家族旅行(17.7%)、友人との旅行(15.5%)、大人の家族旅行(13.8%)となっている。団体旅行も11.6%、一人旅も8.9%ある。幅広い形態での観光客を集めている。この結果から推察されるのは、彦根市観光プロモーションは主に年齢別では40代以上に効果があり、地域別では東海圏、近畿圏に訴求されたことがわかる。今後のプロモーションを考えると、既存主要層への更なる訴求を図るのか、未開拓層へ力を入れるのかの判断が問われるであろう。
彦根に期待すること・楽しみにしていること
彦根で期待する楽しみは、「文化的な名所旧跡を見ること」が74.9%と圧倒的で、次いで「おいしいもの」(42.8%)、「自然景観」(31.0%)となっている。「街や都市」は9.7%と少ない。その他として自由記入で「ひこにゃんに会うこと」が多くあげられていることから、ひこにゃんを楽しみにしている方は多数存在すると思われる。
彦根の総合満足度
彦根の総合満足度は、「大変満足」を7、「大変不満」を1とした時に、「大変満足」が14.1%、「満足」が52.8%、「やや満足」が26.3%である。不満とする回答はほとんどない。平均は5.73となった。年代別に見ると、20、30代と70代以上で満足度は高い。
他自治体との比較
観光庁「観光地の魅力向上に向けた評価手法調査事業報告書」(平成22年3月)において、全国50地域で行った観光満足度調査結果を公表している。その結果と今回実施した彦根市観光満足度調査結果を比較し、彦根市の特徴を明らかにする。観光庁調査の対象地域分類に基くと、彦根市は中小都市に位置付けられる。この中には、川越、飛騨高山、長浜、松江市など彦根市と同様に文化歴史資源を観光に活かしている都市も含まれている。彦根市及び12の中小都市の観光満足度調査結果は次のとおりである。13都市での順位を見ると、彦根市は、紹介意向は10位、総合満足度は9位、再来訪意向は11位と低位に甘んじており、改善の余地は大きい。サービス品質で見ると、中小都市平均より明らかに上位にあるのは、「街並み景観」、「観光・文化施設の内容」、「観光・文化施設の従業員のおもてなし」である。一方、「宿泊施設の部屋の質」、「宿泊施設の授業員のおもてなし」、「費用対効果」は充分な満足度を獲得しているものの13都市の中では低位に甘んじている。(図6)
飛騨高山、長浜との比較
中小都市の中で秀でて満足度が高い飛騨高山と近隣の長浜と比較してみる。満足度については、飛騨高山は、総合満足度に関しては「大変満足」と回答した方の割合は29.1%と高く、全体の満足度をあげている。紹介意向も高い・再来訪意向については、長浜、飛騨高山において、「大変そう思う」と回答された方の割合が高い。彦根の満足度は決して低くはないものの、抜きんでた魅力に欠けていると思われる。サービス品質については、全ての項目では2都市とは遜色はないが、飛騨高山と比べると宿泊施設での評価に若干の差が出ている。飛騨高山の宿泊施設は、ホテル、旅館、民宿、ゲストハウスなど、高級なものからリーズナブルなものまで、バラエティ、施設数とも多く揃っていることも一因と思われる。
彦根観光の満足度を高めるために
今年度初めて実施した観光客満足度調査はであるが、977通もの回答が得られ、現在の彦根に関する観光客の実態的な評価がなされていると考えられる。調査から明らかになった観光客の特徴と今後彦根観光の満足度を高めるためにどのような施策を打つべきか考察する。観光客の特徴としては、滋賀県、愛知県、京都府、大阪府など概ね2時間圏の近県からの観光客が約7割を占めている。3回以上のリピーターが約4割で、近県から四季のイベントを楽しみに繰り返し訪れる観光地となっている。彦根城、彦根城博物館、玄宮園を代表とする歴史文化資源が彦根の最大の観光資源であるが、季節のイベントや食事を合わせて来訪される方が多く、20代から70代まで、家族連れからカップル、団体客まで幅広い客層を集めている。今年度初めて測定した彦根の総合満足度は5.73であった。観光庁調査(平成21年度実施)の12の中小都市平均は5.75であり、ほぼ同様の結果である。紹介意向は5.82(中小都市平均5.81)、再来訪意向は5.11(5.30)で、特に再来訪意向は12都市平均よりも低く、彦根を含めた13都市中11位という低位にとどまった。一定程度の満足度は得ているものの再来訪意向は低位という所に、彦根観光経営の課題がある。彦根の満足度を最も満足度が高かった飛騨高山と比べると、「大変満足」や「ぜひ紹介したい」、「ぜひ再来訪したい」という割合が低い。近年の観光客が求めるのは、そこでしか得られない、その時にしか得られない「本物の感動」であり、この結果は、彦根にまだそのコンテンツが不足している可能性を示唆している。 遠方からの方が多いと考えられる宿泊観光客の評価を見ると、彦根の宿泊施設のバリエーションが少ない影響が出ていると思われる。一つ一つの宿泊施設のクオリティは高いが長年近隣の日帰り観光地であったということがバリエーションの少なさに関係しているのではないかと考えられる。今後は、宿泊して夕食に美味しいものや地酒を味わう、城下町に宿泊して風情を味わう、コンベンションの後に泊まりで懇親するなどの需要を取り込むために、多様な種類の宿泊施設の誘致に取り組む必要があるのではないか。
満足度調査の結果から、今後改善する余地のある点は次のとおりである。
- 本物を感じるプログラムの開発と発展
- 宿泊施設のバリエーションを増やす
- インバウンド観光への対応
彦根市における観光消費額調査でも、日帰り客消費額を宿泊客消費額が調査開始後初めて抜き、彦根観光が過渡期を迎えていることが調査データからも明らかである。日帰り観光地の脱却と宿泊観光地整備の波が今後加速していくであろう。彦根の観光都市としてのレベルアップのチャンスであり、このチャンスを逃してはならない。