12月9日(金)彦根商工会議所4F大ホールにて、彦根商工会議所・滋賀銀行・近畿財務局の共催で、「地方創生セミナー 滋賀県(北部)の文化財・古民家再生を活用したインバウンド推進のための講演会・勉強会」が開催されました。
この講演会は、財務省近畿財務局主導で開催。平成27年度に各地方公共団体において地方版総合戦略が策定され、地方創生に向けた取組が本格化することを踏まえ、「近畿の地方創生」に向けた取組への支援・貢献の一環で、滋賀県下の恵まれた文化財、豊かな自然、おいしい食材をどのように観光に活かすべきかを検討する一助とするために、他地域で成功している取組の知見・ノウハウを学ぶ機会創出を目的とした講演事業として位置づけられています。
第1部の講演会では、滋賀県文化財保護協会普及専門員の大沼芳幸氏と一般社団法人NOTEの代表理事である藤原岳史氏を講師に迎え、大沼氏には「滋賀県の文化財を活用したツーリズム」というテーマのもと、民俗考古学を中心とした琵琶湖文化史、特に漁業技術史および精神文化史の視点から城郭を評価し、観光産業に繋げるポイントについてお話しいただき、藤原氏には「外国人の滞在施設としての古民家活用について」というテーマのもと、国家戦略特区の認定事業として、旅館業法の特例で、複数の古民家のフロントを一元管理する「篠山城下町ホテルNIPPONIA(ニッポニア)」の成り立ちからその優れたモデルのポイントについて講演いただきました。
第2部では「滋賀県の文化財・古民家を活用したまちづくり」というテーマでワークショップを行い、事前に指定された参加者が、大沼氏グループ、藤原氏グループ各8人ずつに分かれ、参加者からの質問や地域課題に講師が答える形の率直な意見交換が行われました。
大沼氏講演のポイント
- 近江が持つ資源とは、近江が造り、継承する「歴史文化遺産」である
- 京都、奈良、大阪、東京など一般的観光地にないものが近江にはある
- 白洲正子の「近江山河抄」にある近江の「得体のしれない魅力」
- 近江は「舞台裏の国」であり「モノを生み出す力に溢れる国」である
- 白洲正子の時代から変わらぬ魅力は「人間と自然との共生」
- 近江の日常が外に対する観光資源となる
- 観光資源となる近江の日常の例
「比叡山延暦寺 薬師瑠璃光如来:琵琶湖に象徴される「水」の浄土」
「日吉大社 水の曼荼羅世界」
「湖北の十一面観音」
「日本遺産針江 古式水道「加畑」のある生活」
「日本遺産伊庭 川と暮らす生活」
「日本遺産沖島 琵琶湖の島の生活」
「海津のズシ」 - 行き過ぎた「文明」に立ち止まる勇気を与えるのが「文化」であり、その両輪が付加価値となる
藤原氏講演のポイント
歴史的建造物(町家、古民家、近代化遺産等)の活用イノベーション
記念館・資料館・コミュニティスペース等に利用されがちな歴史的建造物を収益化し、新たな産業を創出することで地域の雇用増加、行政負担の軽減を図るという事業スキームを実践。400年の歴史に、とけこむように泊まる。NIPPONIAブランドのフラッグシップとして2015年10月3日(土)にオープンした「篠山城下町ホテル NIPPONIA(ニッポニア)」は、約400年の歴史を持ち、国の史跡に指定されている篠山城の城下町全体を「ひとつのホテル」と見立て、築100年超の古民家を含む4棟を、宿泊施設、飲食店等として改装した宿泊施設です。宿泊棟は、築100年を超える明治時代のものから昭和のものまで、歴史的に価値の高い建物が中心です。滞在する中で、その歴史ある空間に包まれ、趣を感じることができる。篠山市内では現在5棟12室が稼働中で、日本全国に眠る147万棟の未使用の歴史的建造物を活用すべく他府道県へも取り組みを広げている。海外にはスペインのPARADOR(パラドール)、ポルトガルのPOUSADA(ポザーダ)、ドイツのロマンティック街道など歴史的建造物を活かした宿泊施設群が存在する。NOTEでは日本版PARADORを創造することを目標としている。