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2016.05.23

「ドイツ古城街道」紀行

近江ツーリズムボード会長 小出英樹

ハイデルベルク城とネッカー川。古城街道沿いの街ハイデルベルクは、ドイツ最古の大学の町である。

古城街道について

 ドイツの観光ルートというと「ロマンティック街道」が最も有名です。マイン河畔のヴェルツブルグから、中世の街並みのローテンブルク、そしてアルプス山麓のフュッセンに至る350kmの街道です(ドイツ南部を南北に走っている)。
 これに対し「古城街道」は、マンハイムからハイデルベルグ、ニュールンベルグとドイツを東西に横切り、さらに国境を越えてプラハまで延びる国際観光ルートです。70以上の城、宮殿、貴族の館が点在した歴史街道です。
 今回は今から60年前にドイツ観光局に登録されたマンハイムからニュルンベルクまでのネッカー渓谷沿いの300kmのオリジナルコースを訪れてきました。訪問したのは9つの城ですが、日本の城郭とはかなり異なった様相です。所有者は行政・DMO・企業・個人と幅広く、単なる歴史観光地というだけでなく、古城ホテル、レストラン、カフェ、ミュージアムなど多彩な利活用で来訪者を愉しませてくれます。
 この古城街道のDMO本部(協議会)はハイルブロンにあり、プロモーションや整備計画などを立案実施しており、年間600万人のツーリストの受け入れをコントロールしています。

歴史遺産と市場

 ドイツ語で、市場(マーケット)のことを「マルクト」と呼びます。ご存知だと思いますが、ヨーロッパには小都市でも広場があります。そして、伝統的な建築物や教会、歴史遺産を中心に立地する広場には市場が設置されていることが多く、「マルクト広場」と呼ばれています。
 そこには、仮設テントやフードカー、キッチンワゴンが出店し、広場の周りのレストラン・カフェは、年間通して店の前で屋外用のテーブル・チェアで営業を行っています。観光客はもちろんのこと、市民も朝食やランチを楽しんでいます。
 魅力的な歴史遺産を眺めながらの食事は、その場所でしか体感できないことであり、今後研究すべき課題です。

「祭り」について

 古城街道の多くの都市には、名物となる祭りがあります。ミュンヘンのオクトーバー・フェスト(通称ビール祭り)は600万人以上が訪れ、ニュールンベルグでは9月アルシュタットフェスト(伝統パレードとコンサート)、12月はドイツでも特に有名なクリスマス・マーケットが開催され、世界中からの観光客で賑わいます。
 大学の街ハイデルベルグは、春のバッハ祭、夏のジャズ音楽祭、古城音楽祭など文化イベントが目白押しです。また市内を横切るネッカー川の橋と城をライトアップし、花火を打ち上げるイベントは特に人気があります。歴史遺産を利用した祭りなどの行催事は集客イベントとして、明らかに経済効果を上げています。

 近江の滞在型周遊コース造成は、城郭・城址を巡るだけでなく、橋爪紳也氏の提唱される「祝祭都市」や「美食都市」の魅力をいかに付加するかが課題です。
 現在、地方創生加速化交付金事業「光とアートで発信する付加価値創造(ブランディング)事業」が具体的に進み始めました。今後、「美食都市」に関してもプロジェクトを立ち上げ、集客都市を目指して参ります。「ドイツ古城街道」は参考となる先進地であると改めて確信した次第です。