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2017.04.07

平成28年度内閣府加速化交付金事業

光とアートで発信する付加価値創造事業「Dramatic Legacy ー歴史遺産で発信するものがたり 彦根市+多賀町 ー」を総括する

 内閣府は、平成27年度補正において、一億総活躍社会の実現に向けた緊急対応として、「希望を生み出す強い経済」の実現と、「子育て支援」や「安心につながる社会保障」も含め「新・三本の矢」の取り組みに貢献するため、1000億円の地方創生加速化交付金を創設した。地方版総合戦略に基づく各自治体の取り組みについて、先駆性を高め、レベルアップの加速化を図ることを目的としている。
 加速化交付金申請には、日本全国の都道府県市町村が応募し、申請事業数2744件のうち、交付対象事業数は1926件が採択され、彦根市・多賀町の地域連携による申請も採択された。
 彦根商工会議所と日本版DMO候補法人近江ツーリズムボードを中核として立ち上がった「彦根・多賀地域連携組織委員会」は、人口減歯止めと経済活性化(雇用拡大)を目的に、平成28年10月~平成29年3月にかけて彦根・多賀地域連携事業として「光とアートで発信する付加価値創造(ブランディング)事業」を展開した。今回のはその全容をピックアップして総括する。

事業目的
人口減歯止めと経済活性化(雇用拡大)
  • 地域連携による活性化の加速化と相乗効果の創出
  • 地域発信による交流人口の増加
  • ライトアップとナイトイベントによる宿泊者数増加推進
  • 官民協働の取り組みによる住民の満足度向上(誇りづくり)
  • それらによる観光消費額の増大
ブランドコンセプト
「不易流行」
  • 伝統は常にイノベーションの連続である。本質的なもののなかに新しいものを取り入れ、未来へつなぐ価値を創造する。
事業コンセプト
「Dramatic Legacy 歴史遺産で発信するものがたり」
  • 彦根・多賀の遺された遺産を活用し、全国・世界に発信する。
イベント名
Light & Art Festival 城あかり 神あかり

1. プロモーション事業

 足元商圏(滋賀県をはじめ京都府、大阪府、岐阜県、愛知県)のPRに関しては“話題喚起“から“動機“を生み、”実行動“へつなげることを目的に実施。メディアへのアプローチを始め、約750の市内店舗へのチラシ・ポスターを配布など行った。全国、海外に関してはJNTOや日本商工会議所、大阪観光局を始めとした公的機関や旅行エージェント、全国ミュージアム、近江と縁のある地域など556箇所にチラシ・ポスターを配布。マスメディアに対しては、キービジュアル+わかりやすく興味を引くネーミングを強く打ち出すことで話題化を図り、消費者の動機を創出し実行動につなげることを目的にアプローチ。大手プレスリリース会社と連携しWeb上の露出を高めた。露出の絶対値が高まることで潜在的に関心のある層への訴求となり動機、実行動へと繋がると想定。
 一般紙、専門紙、通信社、TV、FM、フリーペーパー、ビジネス誌、雑誌、ローカル誌ほか39媒体へアプローチ。39媒体に加えてWeb媒体へも情報を拡散し、オープニングイベント後、新聞、TV、雑誌、Webメディアに対して再度プレスリリース情報を拡散した。

イベントネーミング

 2市町の最大の強みであり、メイン会場である彦根城「城」と多賀大社「神」を生かした2面性 のあるネーミング案。彦根藩井伊家が築いた天下の名城、彦根城、お伊勢さんの親神さまを祀る古社、多賀大社を舞台に繰り広げる「Light & Art Festival」。赤備えの「城あかり」、神秘的な「神 あかり」にふれる。

キービジュアルの製作

 事前プレス用には、彦根城を背景にサプライズを与え、注目を集めるキービジュアルを制作。彦根城×ブレイクダンス。ダンサーには、世界で活躍中ブレイクダンサーのTAISUKEを起用。

メディア露出実績

  • 新聞掲載実績(14件)
  • 雑誌掲載実績(1件)
  • テレビ放映実績(3件)
  • ラジオ放送実績(91回)
  • ウェブ掲載実績(254件)

各種プレイガイドでの発券システムの確立

 全国プレイガイドとして、チケットぴあ、ローチケHMV、CNプレイガイド、イープラス、地域プレイガイドとしてアル・プラザ彦根、ビバシティ平和堂、ひこね市文化プラザ、滋賀県立文化産業交流会館でのチケット発券システムを確立。

2. 国宝彦根城域・文化遺産群・多賀大社境内・門前町家群・胡宮神社境内・参道のライトアップ事業

彦根

 彦根城では、夜の白壁や石垣を、未だかつてない規模とクオリティの美しいライトの数々がドラマティックに彩られた。いろは松から望む佐和口多聞櫓や、表門や黒門・京橋などが暗闇に見事に映えて、見応えのある和の芸術的オブジェに様変わりし、夜の彦根城の新たな魅力が加わった。

実施日程: 9月30日点灯式/10月1日~12月31日まで開催/3月光のオブジェコンテスト実施

ライティング デザイナー 内原智史
内原智史デザイン事務所・所長。光による空間プロデュースをはじめ、照明器具から都市景観照明のデザインを手がける。2007年「国宝・彦根城築城400年祭」のライトアップアドバイザー。

多賀

 お伊勢さんの親神様を祀る多賀大社と門前町や周辺の古社寺では心洗われる神秘的なあかり演出。多賀大社本殿前には、10月半ばより地域住民・子供たちが祈りをこめて手作りした「祈りの石ころあかり」を敷き詰め、光のヒーリング空間「祈りの庭」を創造した。胡宮神社・高源寺ではモミジのライトアップ、大瀧神社参道では「水の森ブルーライトアップ」など、多賀町の魅力をあかりでめぐることができる仕掛けを創出。

実施日程: 10月1日点灯式/10月1日~11月30日まで開催/11月11・12・13日スペシャルデー

ライティング デザイナー 長町志穂
(株)LEM空間工房 代表取締役。都市計画・ランドスケープ・建築の照明計画、あかりによるまちづくりや光のパブリックアートまで、多様な照明デザインを実践。京都造形芸術大学客員教授、グッドデザイン賞審査員。

3. ライティング・コンテスト事業

 ライティング・デザインをクリエーターから募集、受賞作品のオブジェ製作・展示を行った。彦根市が有する豊かな歴史的景観や自然景観を活かし、市民の方々に愛され、誇りに思う光を毎年増やして行くことを目的に開催。その夜の美しい景観づくりに市民の方を始め、彦根を愛する方々にも積極的にご参加頂き、彦根を訪れる人々におもてなしの明かりを灯していただいた。Dramatic Legacyの最後を飾る光の試みは、市民の方々で彦根をより魅力的に彩るライティングコンテストで締めくくられた。

ヒコネ・ヒカリサイクル「光のオブジェ」展の入賞者は、武田まりんさん(彦根市)、原田昌典さん(彦根市)、山本ひまりさん(大津市)、松宮花歩さん(犬上郡)、山本修平さん(近江八幡市)。 第1位は松宮花歩さん甲良西小4年生だった。

4. 文化イベント事業

  • 今昔・和洋のクロスオーバーによるコンサート
  • 音楽イベント及びパフォーマンスイベント開催

彦根実施日程

10月7日(金)
AUN-J CLASSIC ORCHESTRA
アウン・ジェイ クラシック オーケストラ

10月14日(金)
NADESHIKO J ENSEMBLE
ナデシコ ジェイ アンサンブル

10月30日(日)
井伊家ブランドアーティストと湖上の歌姫によるチャレンジコンサート

11月3日(木・祝)
サムライソードパフォーマンス「剣伎衆かむゐ」×新鋭書家 前田鎌利

11月11日(金)
和楽器ユニット「新月」×ヒューマンビートボックス

3月4日(土)
佐野史郎×山本恭司「小泉八雲・朗読の夕べ in 彦根」

多賀実施日程

9月17日(土)
ドキュメンタリー映画上映会「うみ やま あひだ~伊勢神宮の森から響くメッセージ~」

10月6日(木)
AUN-J CLASSIC ORCHESTRA
アウン・ジェイ クラシック オーケストラ ワークショップ

10月15日(土)
NADESHIKO J ENSEMBLE
ナデシコ ジェイ アンサンブル ワークショップ

総括

 本事業では、彦根、多賀共にこれまで民間によって活用されることの少なかった歴史遺産を活用し、ライトアップや文化イベントを実施することができたことが大きな成果と言える。これまでの既存の枠組みを超えたという意味で、「加速化」の名に相応しい事業展開を行うことができたのではないだろうか。しかし、加速の代償は継続である。どんなに早いスプリンターでも継続して延々と走ることはできない。重いエンジンを漸く動かすことができた。あとは継続してエンジンを回し続けるために、今回事業のデータを良い意味でも悪い意味でも分析し、次に生かしていくことが肝要であろう。数値的な結果としては、宿泊客数に関して、全体は平成25年比135%、外国人は平成26年比583%で共に大幅増加。KPI設定数値と比較しても大幅に上回る結果となった。市内宿泊施設の個別ヒアリングでは、平成28年に関しては外国人もさることながら、日本人の宿泊が大きく増加したというコメントが多数みられる。観光消費額に関しては、平成25年比117.7%で大幅に増加したものの、KPI設定値との比較では平成25年比135%を目指したが、約半分の増加率に留まる結果となった。このことから言えることは「加速」したものの「付加価値」がついてこれなかったといったところか。今後この加速化交付金事業「光とアートで発信する付加価値創造事業」は、市町のプロパー事業や推進交付金事業「近江「美食都市」推進プロジェクト事業」に継承されることとなる。繰り返しになるが、今後の更なる地域経済の発展のためには、本事業によって稼働したエンジンを止めさせないことが肝要である。

宿泊客数 29万人(平成25年実績)→33万7千5百人(平成28年目標)→39万1千6百人(28年実績「全体」)

観光消費額 141億円(平成25年実績)→190億円(平成28年目標)→166億円(平成28年実績)

KPI目標・実績

2008実績2009実績2010実績2011実績2012実績2013実績2016目標2016実績
観光消費額(億円)170108120143137141190166
観光入込客数(市内・全体)(万人)333303344359333319350324
外国人観光客入込客数(人)26,13218,34222,83212,52222,02031,08845,00045,514
宿泊客数(市内・全体)(人)205,000172,000219,000300,000298,000290,000337,500391,600
外国人宿泊客数(人)5,6732,3922,411402157,00015,00041,306