彦根には、関西圏でも屈指といわれる彦根城梅林がある。約400本の紅梅や白梅が咲き誇る梅林は、1950年、彦根城が新日本観光地百選に選ばれたのを記念して植えられたものだ。近江ツーリズムボードは、この梅林の美しさ・魅力を再認識し、「桜シーズン前の閑散期の3月に観光客を呼び込みたい、彦根の夜観光の魅力をアピールしたい」という意図と、「美味しいものがある場所に人は集まる」というコンセプトで、『Dramatic Legacy + Dining 〜彦根 梅あかりと食の祭典〜』を開催することになった。
「東風(こち)吹かば 匂いおこせよ 梅の花 主(あるじ)なしとて 春を忘るな」。901年、菅原道真が京の都を離れ大宰府に左遷される時に詠んだ歌とされている。道真だけでなく、梅の花は昔から日本人に愛されてきた。万葉集の中で、桜を詠んだ歌43首に対して梅を詠んだ歌は110首。花と言えば梅、花見と言えば梅の花見だったのだ。
近江ツーリズムボード小出英樹会長(彦根商工会議所会頭)は、10日「梅あかり」の点灯式において「本日から、新しい宝物が増えます。昔から梅の花の趣をご存知の一部の方が楽しんでおられた彦根城の梅林ですが、これをもっと発信して楽しんでいこうというのが今回のメインの取り組みです。もうひとつの宝物はフードカーです。地域の食材を使い、訪れる方々に楽しんでいただこうという試みです。そして、今回初めてご披露させていただくのが、プロダクトデザイン集団「intentionallies」さんにお願いしてデザインしていただいた木製のテーブルベンチです。多賀の間伐材を使い製作しました。伝統的な建物や場所に似合うデザインになっていますので、これからいろいろな場所で使えるように広げていきたいと思います」と挨拶。大久保貴市長は「梅林をどのように活用していくか、長年の課題でしたが、小出会長にこのようなカタチで活用していただくことができ、感謝しています。この場所はかつて米蔵があった場所です。歴史を知りこれからどうしていくかを共に考えていくことが重要ではないかと思っています」と話した。
Dramatic Legacy + Dining 〜彦根 梅あかりと食の祭典〜は、ふたつの大きな見所がある。秋に好評をいただいた佐和口多聞櫓のライトアップは井伊家の家紋“橘”をデザインしたものだったが、今回は、梅の花をデザインしたものになっている。そしてもうひとつは、自然の梅と人が一体となった新しいライトアップだ。内原デザイン事務所の加藤氏は、「梅林のライトアップに合わせ特別に“彦根ランタン”」をデザインしました。この“彦根ランタン”を来場者の皆さんに持って歩いていただくことで、人も光景の一部となります。3月18日の彦根ランタンを使ったオブジェのコンテスト授賞式には、見応えあるものになるでしょう」。授賞式には“彦根ランタン”700個を使い5つのオブジェが展示される予定だ。
ソーラーで充電し暗くなると光を放つ“彦根ランタン”
また、梅林に設置されたパブリックファニチャー(テーブルとイスのセット)は、「かすがい」という名前がついている。デザインを担当したintentionalliesの海野氏は、「日本的な振る舞いや心を大切にしたいという思いから、かすがいをモチーフにデザインしました。かすがいという言葉には人と人や物事を結びつけるという意味合いがあります。これをきっかけに様々なものが結びつき、近江の皆様にかわいがっていただければと思います」と話している。
「かすがい」と名付けられたパブリックファニチャー
彦根城梅林は3月中旬から下旬にかけて見頃を迎える。フードカーも「梅あかり」開催期間中出店している。多くの人にこの催しを知っていただけるよう、広報にご協力いただければ幸いである。