「一般社団法人・近江ツーリズムボード(観光庁登録日本版DMO候補法人)」は2015年の設立以来、「観光集客産業を主軸とした地域経済活性化」を目的に、地域連携を含んだスキームを構築、国内外からの来訪者の消費による経済パイの増大と、広義での観光サービス産業による雇用拡大・地域の全産業の活性化を目指している。更に、近江ツーリズムボードは各商工会議所と協働し、起業促進などの突き抜けた動きを加速させることで、実感することが出来る成長の享受を可能とする体制への進化が期待されている。
では、どのようにすれば国内外からの集客(交流人口の増大)を図ることが出来るだろうか?
他地域との差別化、独自性、そこに行かなければ「観ることができない」、「感じることができない」、「味わうことができない」ものが必須であり、また一方、マーケティングの観点から来訪者ニーズを把握し、期待感を持っていただけるプレゼンテーションが必要であることは言うまでもない。
近江ツーリズムボードの守備範囲は、歴史遺産をはじめ多くの魅力ある資源を有している。勿論、観光消費額を増加させる智恵を出し、観光資源を再編集し、コンテンツを磨き上げ商品価値(付加価値)を増加させ、具現化する努力を怠ってはならない。
では、彦根周辺の地域で集客のために更に必要なコンテンツは何か?幾つかある中で、最も重要で効果があると考えられるのが「美味しさの魅力」である。調査データを見てみても、「その地域の名物料理、特産食材を味わう」というのが来訪動機の上位ランクにある。つまり、美味しいものを求めて旅をするトレンドは今後も陰りは無い。
そこで、「美食都市」を目指すため専門家からアドバイスを受け、地域食材開発の第一歩としてプログラム構築を行った。
- 農商工連携による地域食材の開発及び増産
- 調理技術向上のための地域料理人への「セミナーの開催」(地域食材を使用)
- 地域料理をアピールするための「フードフェアの開催」(イベントによる集客)
- 地域特有の「フードスタイルの開発」(フードカー、仮設店などの研究と開発)
近江ツーリズムボードは、地域経済活性化と住民の満足度を向上させるために、このプログラムを基に「美食都市に挑戦」し地方創生を加速化し推進していく。(不易流行2016年9月号抜粋)
フードカー速報
近江「美食都市」推進プロジェクトフードカー製作業務の受託事業者が正式に決定し、現在急ピッチで製作が進んでいる。このフードカーは「食」による効果的な観光客誘致と市内観光消費の拡大による地域経済の活性化を目的としたもので、野外での食イベントに対応、歴史的景観と佇まいへの配慮、機能性(整備性)には高いレベルを求めた開発・製作となった。
制作中の3台のフードカーは3月初旬デビューする予定だ。
誰もが認める近江の地域食材「近江牛」メニューの出店を想定した鉄板焼き機能に特化したフードカー、様々な食材に対応でき、スタンダードなメニューに対応可能なカフェ機能に特化したフードカー、ドリンクメニューの提供に必要な設備が詰まったバー機能に特化したフードカーである。
清掃性、耐久性、デザイン性が最も優れているオールステンレス製を採用し、設計は飲食関係者が監修。出店者の導線・調理・提供・清掃など含めて理想的な仕様となっている。
今後、この3台は近江ツーリズムボードがレンタルフードカーとして運用し、事業所や料理人の方を随時募集していくこととなる。現在、幅広い飲食業者の方に近江食材と共に利用いただけるよう条件整備などを行っている。
梅林ライトアップ&ファニチャー速報
彦根城内にある、約400本の紅梅や白梅が咲き誇る梅林は、江戸時代には米蔵があった場所である。1950年、彦根城が新日本観光地百選に選ばれたのを記念して、この梅は植えられた。例年は、3月下旬頃に見頃を迎え、関西でも指折りの梅の名所となっている。花見は元々奈良時代(710〜792年)の貴族の行事で、花は「梅」が主流であった。江戸時代初期の頃の花の名所も、湯島天神や亀戸天神などの「梅」の名所で、当時桜の花見はあまり一般的ではなかったため、花見の語源は「梅見」という説が有力である。現在のような桜並木に飲食物を持参して、わいわいと騒ぎ楽しむような花見になったのは、享保年間(1716〜1736年)以降のことで、約300年ほど前にさかのぼる。
この彦根城の隠れた名所「梅林」を活用して、ライトアップデザイナー内原智史氏による梅林ライトアップとフードカーを活用した食の提供、食事をとるための先進的なパブリックファニチャーの製作・設置が今回のプロジェクトで計画されている。近江「美食都市」推進プロジェクト先進的パブリックファニチャー製作業務公募型プロポーザルを経て、製作業者が決定。国内でも評価の高いプロダクトデザイン集団「intentionallies」がデザインを手がけ、彦根の歴史をテーマに唯一無二のコンセプトでオリジナルのファニチャーの製作を行う予定だ。さらに「Dramatic Legacy) 歴史遺産で発信するものがたり」で企画されているライトアップコンテストもこの梅林で同時開催予定である。
intentionallies
建築デザイン事務所インテンショナリーズの代表の鄭 秀和(てい しゅうわ 1968年 - )は、建築家でデザイナー。 東京都生まれ、神奈川県育ち。 武蔵野美術大学大学院修了。 実兄はミュージシャンのテイトウワ。 実兄の影響で、一時期DJ活動を行っていた。1996年の設立以来、建築を中心に様々なメディアにおいて、既存の概念を覆すモノづくりを展開。2003年、日本で最初のデザインホテルとして話題を集めた目黒「HOTEL CLASKA」を設計。その後も、リアル・フリート社のオリジナルブランドである「amadana」において、加湿器、デスクトップオーディオなどを続々と発表。近年はより大規模な建築やインテリア空間へとその活動領域を広げ、日本国内に留まらず海外でも、ホテルや集合住宅のデザイン事業など数多くのプロジェクトを推進している。
内原智史
内原智史デザイン事務所・所長。光による空間プロデュースをはじめ、照明器具から都市景観照明のデザインを手がける。2007年「国宝・彦根城築城400年祭」のライトアップアドバイザー。近年の主な作品は、六本木ヒルズヒルズアリーナ、東京国際空港羽田第2ターミナル、表参道ヒルズ、東京国際空港国際線旅客ターミナル、渋谷ヒカリエ、虎ノ門ヒルズ、ホテルオリオンモトブリゾート&スパ、平等院、銀閣寺、清水寺、 高台寺、金閣寺、青蓮院など。