2016年は英国のEU離脱や米大統領選をはじめとして、さまざまな変化がある年でした。2017年はますますその変化が加速化していくように思います。
この目まぐるしく変化する時代において、今の流れを読み説くキーワードは何なのでしょうか?
今の時代が求めているもの
若干18歳の音楽プロデューサー、アラン・ウォーカーが手掛けた音楽「Faded」(※「消えていく」「色あせていく」というような意味)は、昨年音楽の世界で話題となりました。
曲の発表からわずか1年の間にYouTubeの動画再生回数は8億5千万回(関連動画も含めると10数億回)を越え、ヨーロッパの若者を中心に世界中で爆発的なヒットとなりました。
18歳というプロデューサーの若さも注目されましたが、何よりも話題となったのは、この曲のテーマでもある「現実感」や「生きている実感に対する不安」のようなものに多くの人(特に若い人たち)が共感しているという点でした。評論家は“この目まぐるしい変化の時代を生きる人たちは、この「現実感」や「生きている実感」を掴もうと必死になっている”と分析しています。
逆に言えば、この「生きている実感を満たすもの」、つまり「感動」したり「ワクワク」したり「充実感」を感じるものが、今の時代が求めているものの1つであり、今の時代のキーワードかもしれません。
充実感を求める人々
ウィキペディアによると「リア充」(現実の世界が充実している状態、または充実している人物)という言葉がツイッターやブログ等で世の中に広まり始めたのは2007年ということです。つまり、2017年は「リア充」という言葉が世に広まってからちょうど10年ということになります。
最近では SNS等で現実生活の充実ぶりをアピールしようとして疲れる人たちやその投稿を見て辟易する人たちの「SNS疲れ」「リア充疲れ」が話題になるほど、「充実感」を求める人たちの思いは過熱しています。
モノ消費から コト消費への傾向
観光の世界においても、この傾向は顕著に現れています。
観光庁が実施している訪日外国人消費動向調査によると、中国人観光客を中心とした「爆買い」のブームはもうすでに下火になり、観光客の興味は、「モノ」から「感動」や「ワクワク」する体験へと確実に移ってきているようです。
2015年~2016年の消費動向調査では、「次回の訪日時に期待すること」は、ショッピングから、温泉やレジャー、四季の体感、日本文化の体験へと移り変わり、2016年の7月~9月の最新の動向調査では、「日本滞在中に満足したこと」のトップ3は、1位が「テーマパーク」(89.9%)2位が「日本の日常生活体験」(89.8%)3位が「日本食を食べること」(89.8%)と、体験型の観光に満足する傾向が顕著になっています。
特に注目すべきなのは「次回日本を訪れた時にしたいこと」の項目の中で、「温泉入浴」、「四季の体感」や「自然体験ツアー・農漁村体験」といった日本らしさを味わう体験が「今回の旅行で体験したこと」よりも大幅に上回っている点です。
つまり、訪日旅行者のリピーターを増やすためには、「日本らしい(日本でしかできない)体験を提供することで、感動してもらう」ことが鍵になると思われます。
近江エリアを「感動」する商品にする
訪日外国人の消費動向からもわかるように、日本を訪れる観光客の方々は、「日本らしい何か」の体験を通して「感動」や「ワクワク」することを求めています。
そして、彦根市、米原市、多賀町、豊郷町、愛荘町、甲良町を中心とした近江エリアには訪日外国人旅行者がリピートして来ていただける可能性のある分野がたくさん眠っています。
何でもない田園風景や何でもない日常の生活が訪日外国人旅行者にとっては日本らしさを感じる「感動体験」になりえます。
但し、そのような素材がいくらあっても、そうした素材を「感動する」商品にするためには、何度もアレンジを繰り返しながら、そうした素材を作り替えていかなくてはなりません。いかに高級食材があっても、それだけではおいしい食事にはならないのと同じで、料理人がそうした素材を活かして調理することで、いい素材は、おいしい食事へと生まれ変わるのです。
近江ツーリズムボードの役割
近江ツーリズムボードの役割の1つは、そうした素材を訪日外国人旅行者向けに咀嚼し、何度も何度もアレンジを繰り返した上で、眠っている魅力を「感動する」商品に作り替えることであり、また、そうやってできた「感動する」体験商品を、多言語を使って世界中にアピールしていくことだと思っています。
但し、感動する商品を作るためには、まず自分たちが感動していないと、その良さは伝わりません。 美味しいものの味は、それを本気でおいしいと感じている人からはよく伝わってくるように、本気で感動している人の思いや熱意というのは、人の心の奥に響いて伝わっていきます。
近江ツーリズムボードでは、近江エリアに眠っている魅力あふれる素材を掘り起こすと共に、まず自分たちがその素材の魅力を熟知していることが大切だと思っています。
そしてその素材を通してまず自分たちが感動し、その感動体験を何度も咀嚼しアレンジすることで、そこから得られる喜びを多くの人に伝えていければと思っております。